髪の毛には遺伝が大きく影響するとよく言われます。しかし普段は気にしないような、日常的に行っている些細な習慣が悪影響を与えているという事があります。特に「親からの生活習慣の遺伝」は、何の疑問も持たずにそのまま受け継がれている事も多く、自分ではなかなか気付きにくいものです。ここではそんな「生活習慣の遺伝」について私なりに考えた事をまとめています。ご興味のある方は下記「続きを読む」よりどうぞ。

遺伝子は確かに重要だが、全てが見た目に現れる訳ではない

遺伝が深く関係すると言われている様々な要素の中で、特に髪の毛に影響を及ぼすような要素を考えてみると、例えば糖の消化・分解・吸収・代謝の効率、脂肪の消化・分解・吸収・代謝の効率、蛋白質(アミノ酸)の消化・分解・吸収・代謝の効率、糖・蛋白質からの脂肪への変換、脂肪からのコレステロールへの合成、コレステロール等からの性ホルモンへの合成、アミノ酸等からの成長ホルモンの合成の他、それら様々な代謝に関わる酵素の合成効率や、それらの反応で作られる不要な物質の排出の効率、更にはそれらの反応を調節する能力や、それらの反応により体の状態がどちらかに偏った時、そのバランスを取る能力なども挙げられます。

またストレスを受けた際に起こる様々な心身の反応の他、セロトニンなど精神状態に関わるホルモンの分泌機能、成長ホルモンを分泌する脳下垂体の機能、女性ホルモンを分泌する卵巣の機能、甲状腺ホルモンを分泌する甲状腺の機能、エネルギー代謝で重要なミトコンドリアの機能、各組織へ運ぶ血管の弾力性や血液の元々の構成成分、筋肉における速筋・遅筋の割合などにも遺伝が関係していると言われています。

しかしどれだけ生まれつき遺伝子が優秀であっても、その遺伝子が陽の光を浴びるかどうかは、その後の生活環境によって大きく左右されます。例えば生まれつき頭が良い人でも、脳の細胞へスムーズに栄養を供給し続けるためには、やはり規則正しい生活習慣が必要です。また脳を使ったら休めるのが睡眠、脳に栄養を補給するのが食事、そしてその栄養を送るのが運動です。それらがなければいくら生まれつき優秀な遺伝子を持っていても、その遺伝子は効率良く働いてくれません。

別の例で説明すると、例えば筋肉における速筋と遅筋の割合は遺伝によって決まり、速筋の割合が高いほど瞬発的な競技に向いていて、逆に遅筋の割合が高いほど持久的な競技に向いています。この割合はどんなに筋肉を鍛えても変える事ができないので、生まれつきスポーツへの向き不向きがどうしても決まってしまいます。しかしその割合が影響するのは「ある程度の競技レベル」での話です。技術が拮抗している者同士の競争であれば、確かに速筋と遅筋の割合が成績として表れますが、一般人ではそこまで自分を追い込む事自体が珍しく、実際には気にする必要はないものです。

これは別の言い方をすると、『遺伝子の全てが見た目に「分かりやすい形」で現れる訳ではない』という事だと私は思います。競技レベルの低い環境、例えば体育の授業なんかでは「速筋の割合が高いのに持久的な競技を行っている」「遅筋の割合が高いのに瞬発的な競技を行っている」という事も多く、足が速い人は「他の人より体の使い方が上手いから足が速い」のであって、「足が速い=速筋の割合が高い」とは限りませんよね。そのように見た目と遺伝子は必ずしも一致しないのです。

何が言いたいのかというと、例え自分の両親あるいは親族の髪の毛が薄かったとしても、それは単に「髪の毛に良い影響を与えるような遺伝子が、何らかの理由で、見た目に分かりやすい形で現れなかった」というだけで、実際には髪の毛に良い影響を与えるような遺伝子を持っているかもしれません。前述してきたように、遺伝子は見た目だけでは分からないものです。「遺伝だから」と言って何もしない内から諦めてしまうのではなく、その「何らかの理由」を考え、良い影響を与える遺伝子を最大限活かしましょう。親なら自分と同じ苦労を子どもに味合わせたくないと思うのが当然のはず。今できる事から少しずつ積み重ねるべきです。


髪の毛の健康のために今何をすべきかを考えてみよう

髪の毛の健康を考える時、特定の食べ物や特定の栄養素を集中的に食べ、それにばかり固執してしまいがちです。また逆に髪の毛に悪いとされる食べ物や栄養素を、極端に制限してしまう事も多いです。しかし髪の毛の健康は食習慣だけに左右される訳ではありません。食習慣以外のどこかに「髪の毛の健康を悪化させる要素」があり、それを意図せずに継続している場合、いくら髪の毛に効果があるとされる食べ物や栄養素を摂取しても、「摂らないよりマシ」程度の結果にしかなりません。せっかく栄養素を摂取するのなら、それが「効率良く利用されるような状態」にする事の方が先決だと思います。

そのために優先すべきなのはまず睡眠習慣の改善です。これは単純に「毎日同じ時間に寝て、毎日同じ時間に起きる」「明るくなったら起きて、暗くなったら寝る」「十分な睡眠時間を確保する(9時間が理想)」ような規則正しい睡眠習慣が必要になるでしょう。特に睡眠は昼間の活動によってその必要性が増します。これは昼間に分泌されるセロトニンと、睡眠中に分泌されるメラトニンが関係していて、そのメラトニンがセロトニンから作られているからです。つまり「活動と休息のメリハリ」こそが重要であり、それが睡眠の質を高めます。他、昼間に太陽光を浴びる事も重要です。これも太陽光がセロトニンの分泌を促し、そのセロトニンがメラトニンの分泌を促すからです。特にセロトニンはドーパミンやノルアドレナリンなど精神状態に関わる様々なホルモンをコントロールする役割があるので、そうして全体としてホルモンバランスを整えると、精神的に安定し、ストレスコントロールもできるようになります。ストレスが髪の毛の健康に良くないのは周知の事実です。

もちろん食習慣の改善が必要なのは言わずもがなですが、食習慣の改善は必ず運動習慣の改善とセットで考えるべきです。何故なら、それぞれの栄養素の必要量やそれを代謝する際の効率などは運動量によって大きく変わるからです。特に糖・蛋白質・脂肪のようなエネルギーとなる栄養素の代謝が適切に行われるためには、それらが「必要な状態にしておく事」が重要で、それを作るのがやはり運動です。運動によって筋肉にストレスを与えると、そのストレスから身を守ろうと、筋肉を大きくし、またその大きな筋肉を維持しようとします。これは環境への適応能力の一つで、いわゆる「筋トレ」はそれを利用したものです。筋トレを行うと糖・蛋白質・脂肪といったエネルギーとなる栄養素の必要量が増え、その代謝が促されます。またその代謝に関わるビタミンやミネラルも当然必要量が増えます。それにより摂取した栄養素が、効率良く消化・吸収・利用できるようになり、食習慣単独で改善するよりも、効果が大きく向上するはずです。

尚、筋トレを行って筋肉を大きくしていくと、成長ホルモンの分泌が促されます。それによっては髪の毛にも一定の良い影響があると思われます。一方で、男性ホルモンの分泌も促されます。男性ホルモンが過剰になる事は一般的に「薄毛の原因になる」と知られており、筋トレをすると薄毛を進行させるのではないか?という懸念を持つ人もいると思います。しかし薄毛は男性ホルモンの分泌だけが影響している訳ではありません。ボディビルダーやトップアスリートのように、限界近くまで筋肉を鍛えている人は別として、腕立てを数十回などその程度の筋トレだけでは、髪の毛に悪影響を及ぼすほどのホルモンバランスの変化は起こらないというのが私の持論です。おそらくストレスが増えた事による影響や、食事と運動・睡眠のバランスが崩れた事による影響が大きいと思います。


親からの「生活習慣の遺伝」に注意する

前述のように、確かに元々生まれ持った遺伝子による影響は少なからず存在すると思います。しかし注意深く生活習慣を見ていけば改善すべき箇所はたくさんあり、それを毎日積み重ねる事による影響は、我々が想像する以上に大きいものです。

例えば1日6時間の睡眠を毎日積み重ねていけば、数年後には相当大きな積み重ねになっています。その1つ1つが悪い習慣だったらと考えると、その影響は計り知れません。また親が食事制限メインのダイエットに一生懸命なら、その子どももダイエット志向になる可能性が高いです。そこからもたらされる「〇〇を食べたら痩せる」「〇〇を避ければ痩せる」「〇〇を食べたら健康になる」「〇〇は健康に良くない」などの知識は、毎日の食習慣の積み重ねに大きな影響を与えます。

しかし子どもにとっての親の行動は正しいと思うのが普通で、むしろ疑問を持つような子どもの方が珍しいと思います。おそらく殆どの子どもは、そうした親がしている事を何の疑問も持たずにそのまま受け継ぎ、それを大人になった今でも継続してしまうのではないでしょうか。もしそうして親から受け継いだ習慣の中で、もし「髪の毛の健康を妨げるような悪しき習慣」があったとしたら? そのような「当たり前とされている事」の中にこそ、大きなヒントがあるのではないかと私は考えます。疑問を持つべきです。

悪しき鎖はどこかで断ち切らなければなりません。例え親とその子どもであっても「違う人間」であり、親にとって当たり前の事でも、それが子どもにとっても当たり前であるとは限りません。遺伝どうこう言う前に、まずは「自分が当たり前のように行っている習慣」に目を向けましょう。