甲状腺ホルモンは新陳代謝を促す働きのあるホルモンで、その分泌は髪の毛にも影響を与えると言われています。この記事ではそんな甲状腺ホルモンについて私なりに考えた事を書いてみます。ご興味のある方は下記「続きを読む」よりどうぞ。

●甲状腺ホルモンの役割について

甲状腺ホルモンは脳下垂体から分泌される「甲状腺刺激ホルモン」が甲状腺(顎の根本付近にある小さな器官)に刺激を与える事で、その甲状腺から分泌されています。人間のあらゆる細胞には甲状腺ホルモンを受け取るための受容体があると言われており、実質全ての細胞に作用する重要なホルモンです。その役割は「古くなった細胞を取り除き、細胞を新しく作り変える」という「新陳代謝」の過程をスムーズにする事です。特にタンパク質の合成に必要となるホルモンであり、発毛や育毛という点では非常に重要になります。また甲状腺ホルモンを受け取った細胞のエネルギー消費を活発化させ、糖、脂肪、タンパク質など様々な栄養素をエネルギーにしやすくする役割もあります。ですので単純に言えば「基礎代謝」も向上する事になります。大人では「基礎代謝が向上する=脂肪が蓄積しにくくなる=体型の維持が容易」という事です。

尚、同じような役割を持っているホルモンでは「成長ホルモン」の方がよく知られています。この成長ホルモンは脳下垂体から分泌されるホルモンで、細胞が傷ついた時にその細胞を修復したり、新しく作る変える際に作用します。一方、甲状腺ホルモンは顎の付け根(両側)にある甲状腺から分泌されるホルモンで、前述した通り新陳代謝を活性化させ、その細胞の成長をスムーズにする働きがあります。よってどちらか一方の分泌が悪くなっても健康の維持には良くないでしょう。


●甲状腺ホルモンの分泌を促すためには

甲状腺ホルモンは様々な種類のアミノ酸と「ヨウ素」というミネラルから作られています。ですのでアミノ酸やヨウ素が不足すると甲状腺ホルモンの分泌量が減り、頭皮に悪影響を及ぼす事があります。アミノ酸は乳製品、大豆製品、肉、魚、卵などに多く含まれており、それらを定期的に食べる事が重要です。

一方、ヨウ素に関しては主に海藻類などの海産物に含まれているミネラルで、特に昆布に多く含まれています。その他ではワカメやヒジキなど海藻類全般、マダラやイワシ、サバなどの魚類全般にも含まれています。ヨウ素は必要量の少ないミネラルであり、海に囲まれた島国の日本では比較的摂る機会には恵まれています。しかし現代人は魚や海藻類を食べる習慣が減っていると言われており、食べる習慣のない人では食べすぎない程度であれば意識的に摂っても損はないでしょう。尚、海産物は全般的に塩分(ナトリウム)が多く含まれているので、そのような食品を選ぶ際には注意が必要です。同時にカリウムも摂ってナトリウムの排出を促したり、運動をして汗をかくと良いでしょう。カリウムは主に大豆製品や芋類に多く含まれています。


●甲状腺ホルモンの分泌を悪くする病気について

甲状腺ホルモンの分泌を悪くするような病気は、先天的に甲状腺機能が低下する「先天性甲状腺機能低下症(クレチン症)」と、少し後になって症状が出る「後天性甲状腺機能低下症」の2つに分けられます。どちらも甲状腺の機能が低下する事によって甲状腺ホルモンの分泌量が著しく悪くなりますが、甲状腺機能が後天的に低下するケースはあまりなく、80%が先天的なケースとされています。また日本ではデータにもよりますが、3千人に1人という割合で治療を受けている病気で、実は男性よりも女性の方が発症する割合は高いと言われています。

例えば甲状腺の機能が低下するケースとしては、脳下垂体の機能が何らかの原因で悪かったり、甲状腺そのものが生まれつきなかったり、甲状腺があってもその大きさが小さかったり、位置がずれていて上手く働く事ができなかったり、大きさや位置は正常なのにホルモンを作り出す能力が弱かったり、甲状腺自体は正常でも細胞の甲状腺を受け取る受容体に異常があったりなどが挙げられます。その内、生まれつきのものが「先天性甲状腺機能低下症」、しばらく経ってから起こるものが「後天性甲状腺機能低下症」という事です。


●先天性甲状腺機能低下症(クレチン症)について

甲状腺は「子どもがお母さんのお腹の中にいる時」に母体からの影響を強く受けます。それによって何らかの原因(妊娠中の母親がヨウ素を摂り過ぎず摂らな過ぎない事で一部予防する事が可能との事)で甲状腺機能が低下すると、生まれつき全身に「発育不全」が見られる事があります。身長はもちろん臓器なども十分な発達ができないまま生まれてくる可能性がある訳です。このクレチン症はそれが判明した時点で早急に甲状腺ホルモン投与などの治療が行われます。生まれついての症状としては、例えば黄疸が長く続く、泣き声がかすれる、手足が冷たい、舌が大きい、出臍があるなどがあります。

特に生まれてから2~3ヶ月という期間における甲状腺機能の低下は、その後の「知能の発達」にも大きな影響を与えると言われています。ですのでほとんどの場合で早期に治療を開始し、早期に治療を終えられるよう努めます。治療が成功すれば知能的にはほとんど問題なくなりますが、甲状腺ホルモンの分泌異常がその後も続くと、精神発達の遅れや知能発達に影響を与える事があります。甲状腺ホルモンは大人でも必要不可欠なホルモンなのでホルモン分泌の異常がある限り治療は続き、人によっては生涯に渡って治療を続ける事もあります。


●後天性甲状腺機能低下症について

生まれた後しばらく経って甲状腺の機能が低下するケースとしては、例えば食習慣による極端なヨウ素の不足や交通事故など突発的な事故による甲状腺の損傷、その他では放射性物質の蓄積や高い放射線を浴びる事等によっても起こります。突発的に起きるようなものでは原因不明とされているものも中にはあります。

ただ、後天性で起こるもののほとんどが「自己免疫性甲状腺炎」と呼ばれる病気によるもので、やはり男性よりも女性の方がかかる可能性が高いと言われています。これは何らかの原因で甲状腺で作られる「チログロブリン」というタンパク質が血中に出現し、自己免疫によってそのチログロブリンに対する抗体を勝手に作り、自分自身で甲状腺を攻撃してしまうというものです。甲状腺に蓄えられたチログロブリンは甲状腺刺激ホルモンによって分解され、その結果として甲状腺ホルモンとして全身の細胞に行き渡るので、チログロブリンが血中に出現するという事は「甲状腺ホルモンの量が減る」という事を意味しています。尚、この自己免疫性甲状腺炎の中には思春期以降の女性にかかりやすい「慢性甲状腺炎(橋本病)」や、思春期以前の女性でもかかる事のある「萎縮性自己免疫性甲状腺炎」もあります。

そのように後天的に起こる場合、例えば今まで順調に身長が伸びてきた人は、甲状腺ホルモンの分泌が悪くなる事でその成長速度が急に遅くなる事があります。その他では代謝異常が起こる事で全身や体のどこかがだるく感じたり、記憶力や集中力の低下などが起こる事もあります。そこですぐに気づく事ができればほとんどの場合で治療によって改善しますが、これらの症状は風邪と誤認する事もあるので注意すべきです。できるだけ早く気づいて治療を開始(内分泌科など)するようにしましょう

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