栄養をスムーズに消化・吸収・利用するためには、よく噛んで食べる必要があります。またよく噛んで食べる事で、口の周りの筋肉や顎の筋肉をよく使う事も重要です。ここではそれについて私なりに考えた事を書いてみます。ご興味のある方は下記「続きを読む」よりどうぞ。

唾液の持つ重要な役割について

顎を閉じて噛む事を「咀嚼」と言いますが、咀嚼をすると口の中にある唾液腺から「唾液(プチアリン)」が分泌されます。唾液はいわゆる「ツバ」と同じものなので、汚いイメージを持っている人も多いかもしれませんが、この唾液は消化液の一種であり、糖を少し分解して消化しやすくするという重要な役割があります。つまり口に食べ物を入れた時点で、既に消化は始まっているのです。

また水分の少ない食べ物は、そのままでは喉及び食道を通りにくいですが、唾液は水分を豊富に含んでおり、食べ物を湿らせ、喉~食道及び胃へ運びやすくする役割もあります。それは結果として喉や食道の表面を守る意味もあり、不用意に粘膜を傷つけて免疫力が低下するという事も予防しています。他、唾液には口の中を乾燥から守り、それによって菌の増殖を抑え、虫歯や歯周病などを予防し、歯の再石灰化も促す役割もあると言われています。たかが唾液ですが、その役割は非常に重要なものです。


唾液は消化・吸収の最初のステップである

糖は「多糖類」「少糖類」「単糖類」に分ける事ができます。この内、多糖類は糖の分子がたくさん連なったもの、少糖類はそれが少ない状態で連なっているものです。更にその少糖類は連なった糖の数によって分けられ、それぞれ四糖類、三糖類、二糖類があります。そして糖の中で最も単純な構造をしているのが単糖類です。

多糖類や少糖類はそのままでは吸収する事はできないため、まず唾液によって少しずつ分解しながら、胃や腸へと送る必要があります。そして胃では胃液、十二指腸(小腸)では膵液や腸液によって糖は細かく分解、最終的には単糖類にまで分解され、そこでようやく吸収する事ができます。唾液は腸へ運ばれる頃には多くが失活しますが、唾液がなければ「少しずつ分解する」という事ができず、吸収される前になって一気に分解される事になるため、血糖値の急上昇を招く原因になると言われています。唾液は消化における一番最初のステップであり、その意味でも非常に重要なのです。

ちなみにですが、よく聞く糖の名前を挙げてみると、例えばデンプン・グリコーゲン・デキストリンは多糖類、少糖類の内、ショ糖(スクロース)・乳糖(ラクトース)・麦芽糖(マルトース)が二糖類、果糖(フルクトース)・ブドウ糖(グルコース)が単糖類です。例外として数個の単糖類同士が結合している「オリゴ糖(少糖類)」もあります。一方、多糖類の中では消化酵素では分解できない種類の糖もあり、それが「食物繊維」と呼ばれます。すなわち食物繊維は糖がたくさん連なった糖の一種であり、食物繊維を含む糖の事を「炭水化物」と呼び、炭水化物の中でも食物繊維を除く糖の事を特に「糖質」と呼びます。


高血糖も良くないが実は低血糖も良くない

多糖類や少糖類は単糖類と比べれば分解・吸収は緩やかで、同じく単糖類と比べれば血糖値は上がりにくいです。しかし吸収される際にはいずれにしろ単糖類として吸収されるため、一度に大量の多糖類を摂取すると、吸収される際に血糖値が大きく上がってしまいます。もちろん例え血糖値が上がっても、糖がしっかりと細胞へ取り込まれていれば良いのですが、吸収し切れなかった多くの糖は行き場を失う事になります。余った糖は、時間経過と共に少しずつ「エネルギーとして長期に安定している脂肪」へと変換されていきます。それが肥満へと繋がる訳です。

一方、単糖類には果糖とブドウ糖がありますが、果糖はインスリンを介さずに吸収、ブドウ糖はインスリンを介して吸収されます。どちらも消化・吸収が非常に速く、すぐに細胞のエネルギー源として利用する事ができます。しかしその吸収の速さから、「血糖値の急上昇→インスリンの大量分泌→逆に血糖値が急低下→血糖値を上げようとアドレナリンなどのホルモンが分泌→血糖値が安定化するまでそれを繰り返す」という事が起こり、体に大きな負担がかかる場合があります(果糖では血糖値の上下動は起こらないが、余剰の果糖は脂肪酸の合成に回されてしまう)。

特に注意すべきなのはインスリンによって血糖値が下がった時、その下げ幅が大きいほど「糖が不足していると勘違いする事がある」という事です。つまり実際には糖が不足していないにも関わらず、血糖値が急激に下がる事で体が糖を欲し、強烈な空腹感が訪れる場合があるのです。それが糖を多く含む食事にハマってしまう一つの理由で、そうなると次の食事までの間隔が短くなり、食事の量や回数が増えていきます。当然それは肥満の原因になるでしょう。

更に、それが進行するとインスリンを分泌する機能が壊れたり、インスリンが分泌されてもインスリン自体の機能が低下していたり、あるいはインスリンを受け取る側の細胞の受容器が鈍くなったりして、自力では血糖値を下げる事が難しくなっていきます。それがいわゆる「糖尿病」と呼ばれる状態です。「血糖値」と聞くと「高いと危険」という印象が強いのですが、そのように「インスリンの過剰分泌による低血糖」も実は糖尿病のサインとなる事があります。


糖尿病は様々な病気の引き金になる事がある

高血糖の状態が長時間続くと、血液がドロドロの状態になり、血管内をスムーズに流れる事が難しくなります。それによって特に流れの速い場所では血液が血管の壁を傷つけてしまう事があり、それが血栓(血の塊)の原因になります。血栓は小さければすぐに溶けてしまいますが、ある程度の大きさでは溶けずにそのまま流れる事があり、細い血管を詰まらせ、そこから先にある細胞の機能を低下させます。尚、既に塩分過多などによって高血圧(血管が細くなり、その細い血管内に大量の血液が流れる事になるので、血流が速くなり、血管の壁を傷つけやすくなる)になっていると、更にそのリスクを高める事になるでしょう。

そうして血管の壁が傷ついた時、流れが早い血管ほど新陳代謝は活発なので、通常であればすぐに修復されます。しかし何らかの原因で、傷ついた場所に過酸化脂質が増殖する事があり、それが血管の壁に強く張り付いてしまう事があります。それがいわゆる「動脈硬化」の一種で、これが起こると血管は厚く・硬く・脆くなり、そして内部は細くなります。そこに偶然大きな血栓が到達すれば、当然その血管を詰まらせ、そこから先の細胞を壊死させる事もあります。進行すると、次第に生命活動の維持に必要な重要な臓器でも起こるようになり、それが心臓で起こるのが心筋梗塞、脳で起こるのが脳梗塞です。

ここまで言うと大げさに思えますが、食事は毎日行うものです。例えば1日3回食事をしていれば1年だけで1095回もの積み重ねがあります。前述のように「咀嚼」は糖の消化において重要な過程であり、数年間にも及ぶ食習慣の積み重ねは非常に大きなものです。決して軽んじるべきではありません。


よく噛んで食べる習慣は美容にも繋がる

現代人は柔らかい食べ物を食べる機会が増え、顎を使わなくなっていると言われています。特に現代の日本人は一度の食事で行う咀嚼の回数が大きく減っており、単純に食べる量の多い欧米人と比べ、子どもの顎の発達が遅れる傾向があるそうです。成長過程で上手く顎が発達しない場合、単純に顎が大きくなりません。「顎が小さい」という事は「顔が小さくなる」という事でもあり、日本人とっては嬉しい事かもしれませんが、顎が小さくなると「大人の歯」の生える事のできるスペースが狭くなり、「歯並び」は確実に悪くなります(大人になってからでは保険適用外で歯列矯正するしかない)。

歯並びが悪くなると、食べ物を上手く噛み砕く事ができなくなり、食べ物を柔らかくできないまま喉・食道・胃へ運ぶ事になります。それによって喉・食道・胃の表面を痛める事があり、特に喉では免疫力の低下に繋がる事があります(タバコやお酒があれば物理的なダメージも蓄積する)。また単純に消化が悪くなるため、胃腸では消化液の分泌量が増え、胃炎や胃潰瘍などにもなりやすくなります。更に前述のように咀嚼では唾液が分泌され、唾液には糖を分解する役割があります。噛み合わせが狂うと咀嚼の回数が減るため、唾液の分泌が悪くなり、血糖値の急上昇の原因になる事もあるのです。

他、歯並びが悪くなると、人によっては口を上手く閉じる事ができなくなります。それにより口の中が乾燥しやすくなり、虫歯や歯周病、口臭の原因になる事がある上、口の周りの筋肉が衰える事で顔の皮膚のシワやたるみ、成長過程では「顔の作り」にも大きな影響を及ぼします(睡眠中の蓄積が大きい。特にうつ伏せは歯並び悪化・顎関節症の原因)。更には口呼吸が習慣化する事で、異物の侵入頻度が増え、免疫力の低下やアレルギー体質になる場合もあります。

ちなみに噛み合わせが悪い事では、肩コリ、猫背、頭痛、力み(脳の血管にダメージ)の原因になるという事も言われています。


皮膚は地続きになっている

顔の皮膚と頭の皮膚は地続きになっており、顔の筋肉を動かすとそれに応じて頭の皮膚も動きます。これにより日常的に顔の筋肉を動かす事で、顔~頭の皮膚が柔軟になり、周囲への血流が促される効果があると思われます。「よく噛んで食べる事」はその意味でも重要です。

また地続きという意味では、いわゆるストレートネックや猫背なども関係しています。頭が前へ出たり、あるいは下に垂れ下がった状態が長時間続くと、首の後ろの皮膚~後頭部の皮膚が常に伸ばされた状態になります。その固定化された状態が、頭皮への血流が悪くなる原因になる事もあるのです。細かな事(更に細かい事を言えば睡眠中の寝返りの回数も関係する)ですが、こういった毎日の積み重ねも重要です。